奈良県山辺郡山添村の神野山にはたくさんのイワクラ(磐座)が偏在するということで、イワクラ学会有志による11月26日~27日、1泊2日の調査ツアーに参加してきました。
イワクラ(磐座)とは、巨石による構築物を指す言葉です。イギリスにあるストーンヘンジ(環状列石)などが有名な例として挙げられ、何らかの宗教的な役割を持っていたとも考えられています。イワクラ学会では主に縄文期につくられたであろうと思われるものをイワクラと呼称しています。
今回のツアーの発起人である柳原氏は神野山のイワクラの配置は天空の星の配置を模したものという説を唱えられています。(詳しくはイワクラ(磐座)学会ホームページで)
神野山のものをはじめ日本に現存するイワクラは山奥に分け入った個所にあることが多く、人目に触れる機会が少ない上に一見したところ単なる大きな自然石と見分けがつきにくく、また文献などが残っていないため学問・研究の対象となったのはごく最近のことですがこれまでに知られているものだけでもたくさんあります。
日本に仏教が伝来するずっと以前。原始的なアニミズム(自然崇拝)や山岳信仰の一部として「巨石信仰」も発生したと考えられています。
歴史の古い奈良であればその霊性を表現するイワクラの数も他の地域より多く、一度の旅程でたくさんのイワクラを訪れるのには適した場所です。
文献や確たる物証に頼れない以上、想像力を最大限にたくましくして推測すれば、昔の人々が日々自然の脅威にさらされる生活の中でたくさんの食物や生活資材などの恵みを与えてくれる山のその中腹で、ヒューマンスケールを大きく超える巨石の量塊に向き合って(現代人がとうに失った)霊的な感覚をそこに見出しその巨石に一定の加工を施して祈りの場としたのでしょう。遺産として残されたイワクラからは昔の人々の宗教的な感覚と密着した日常生活の一端を感じ取ることができます。
今回の探訪では現代と全く異なる空間の見立て方、使われ方を追体験することができました。これは建築設計をナリワイとする者にとって古代の空間把握技術の知恵を拝借することによって、味わい深い空間を探求しこれからの設計の仕事に応用していく上でたくさんのモチーフを指し示してくれています。
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